安楽日記

生活、聴いた音楽、読んだ本について、書いています。

最近、guca owlの『past & highway』しか聴いていないです。

最近、guca owlというラッパーの新譜『past&highway』ばかり聴いています。

朝も昼も夜もずっとループしています。

 

人気アーティストが次から次に出てきては、いつの間にかいなくなり、

アーティスの楽曲もファストフード的に消費されている昨今。

中々、1つの曲、アルバムを味わって聴く事も少なくなってきてしまいました。

 

しかし、guca owlの『past&highway』はかれこれ3週間も聴き続けています。

彼の作品を聴いていく中で、僕の中でもあれこれ考えることがあったので、

思考をまとめる意味でも、つらつらと書いていこうと思います。

 

また、下記に記すことは、彼がこの作品について、語っていることではなく、

あくまでも僕の独断と偏見に基づく印象批評です。

 

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guca owl HighWall

 

こちらのトレーラーでも示唆されているように、本作はguca owlが交通事故をきっかけに、走馬灯のように過去を振り返る作品の構成となっています。

 

youtu.be

 

Exitを抜いて、EPは5曲で構成されています。

それでは、順番にレビューを述べていこうと思います。

youtubeに楽曲のあるものは、そのリンクも貼っていきます。

 

1.Old me

「見渡す空と町工場 出る杭は打たれる校舎」

 

この1フレーズで、何でもできるの年齢の若者が環境と制度にがんじがらめにされて、

何も身動きが取れなくなっている様子が表現されているのが、

詩として完成度が高すぎて鳥肌が立ちました。

 

これは、この曲のHookの後の最初の1フレーズですが、

この彼の地元の環境と、その中で彼が感じ・考えてきた事が全編を通して、

このEPのベースになっています。

 

そして、上記のリリックのように、guca owlの冴え渡る表現が随所に散りばめられています。

灰色の鬱屈した景色の中に、キラキラした宝石が散りばめられているような、

そんな印象を覚えます。

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2.Highlight

「こんな街で何をすれば胸を張れる? こんな街で何をすれば胸を張れるの?」

 

この「街」は何を指すのでしょうか。

guca owlの育った街だけではなく、日本全体をこの空気が覆っていると感じます。

 

就活の時期になって、「やりたい事がない」という若者が増えていますが、

経済が停滞し、閉塞感しかない日本の中でワクワクできる仕事なんてほぼほぼないでしょう。

(実際にはあるけれど、社会人になるまで意外と見つけられない人が多い)

 

政治家の汚職や、大企業の不正、そんなニュースばかり見ていたら、そういう思考になるのもしょうがない。

まあ、これはメディアが良くないかもしれません。

 

こういった、大きなテーマを扱っているように感じる曲ですが、

あくまでもguca owlは自分の育った街の情景に落とし込んで、にリリックを綴ります。

 

 

飲み歩く廃れた街に 限られてる酒屋も 

売り上げとかこだわり よりも探し求めてるよ若い体を 

だから冷やすコカレロ

安くするレジ ここじゃよくある話

こんな街じゃ当然 遠くなる夢

 

彼自身が自身の作風を「皮肉な世界観」と述べていますが、

その世界観が全面に出た素晴らしいリリックだと思います。

淡々と街の情景を綴っているように見えて、強烈な批判精神が垣間見えます。

 

また、クソなことをクソだと直接的に言うのは、楽ですが、

彼は、決して安直な言葉選びをしません。

比喩的に、婉曲的に、詩的に慎重に言葉を綴ります。

 

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3.Am right?

「きっと間違いも犯すだろう 俺のことだから何回でも 雨上がりヒロユキミヤサコ」

 

自分の街を皮肉に皮肉った全曲から一変して、「Am right?」というタイトルの通り、自分自身も「正しい道を歩けているか?」と自省する内容の一曲。

 

あれだけ世間でバッシングされていた、雨上がり決死隊の宮迫氏を受け入れるような、

リリックにハッとさせれらました。

 

聖書の中に、「罪の女」という、有名な話があります。

 

当時、重罪とされていた姦通の罪を犯した女性に対して、

民集まってが石を投げつけて彼女を死刑に処そうとしていたところに、

キリストがやってきて、下記のような言葉をいいます。

 

「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず石を投げなさい」

 

すると、市民は一人、一人と立ち去っていき、

最後には誰もその場に残らなかったという話です。

 

一度も間違った行いをせずに生きてきた人は誰もいないですし、

そもそも、誰が何を持って善と悪を判断するのか、誰にもその権利はないので、

現在の法治国家があるわけです。

(悪法もあるじゃないかというお話もありますが、話がややこしくなるので、

一旦今回は置いておきます)

 

それを踏まえると、自分の憂さ晴らしのために宮迫氏のような、

有名人をバッシングしたりするのは、なんだかなあと思ってしまいます。

 

また、有名人の熱愛報道なんかに、喜んだり悲しんだりする人も同様です。

まずは、自分が正しいと思う道を進んでみて、たまに振り返り、

間違っていたら軌道修正するくらいの心持ちでいいんじゃないかと思います。

 

guca owlは20代前半にも関わらず、人間のディープな部分を突いていると、

彼の曲を聴くたびに驚かされます。

 

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4.WORD

「また誰も救えない 客や街 仲間 誰も救えないだろう」

 

正直、この曲は情景が断片すぎて、いまいち分からない部分が多いです。

タイトルはWORDですが、私はずっと「WORLD」だと勘違いしていました。

しかし、「My own WORD」が「My own WORLD」でもあると考えると、

しっくりくる部分もあります。

 

ラッパーにとって、言葉は世界そのものです。

我々は、言葉によってしか、人にきちんと物事を伝えることはできません。

勿論、言葉にも有限性があり、言葉以外で伝えることが正しい場面もありますが、

基本的に我々は、言葉で考え、言葉で理解し、言葉でアウトプットします。

 

先ほども述べたように、この曲はかなり情景が断片的です。

 

前半は、ある女性のことを綴っていますが、後半は地元のbroについて、

語っているように思えます。

しかし、1曲前の「Am right?」のように、guca owlのリリックには、

自省するような内容もあります。

 

そして、この曲でも、他人のことをリリックにしていると思いきや、

彼自身のことを言及しているように取れる部分もあります。

 

例えば、「ただ投げ捨てた他にも?」というリリックは、

前曲の「むやみやたらに全部捨てたけど Am I right?」というリリックを想起させます。

 

冒頭で述べたように、この曲に関してはまだよく分からない部分が多いので、

この辺にしておきます。

 

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5.High Wall

「過去には感謝してる 愛してやれねぇが感謝してる」

 

たまに、過去の出来事を一生引きずって、グチグチとこぼす人がいますが、なんの生産性もありません。

バッドマインドに陥って、ストレスが溜まるだけですし、「◯◯があったから、自分は今不幸なんだ」という他責思考は、自他を含め誰も幸せになりません。

それよりは、過去のビハインドを利用して飛んでやろうというくらいの気概が必要です。

というか、一度も挫折をしないでロイヤルストレートフラッシュを決められる人以外は、そういう生き方しかできないと思います。 

そして、この考え方を突き詰めると、ニーチェの提唱する永劫回帰の思想まで到達します。

永劫回帰について、書くとかなり長くなってしまうので、それはまたの機会にします。

 

highwallは、本アルバムで一番刺さった曲です。

それまでの曲が、過去に向いた曲だったのに対し、この曲は時系列的には、過去から未来に現在進行系で進んでいる曲です。

 

割とそれまでの曲が、彼の育った街のあれこれを皮肉感もありつつも、巧みに描写していたのに対し、この曲は前しか向いていないです。

そして、パンチラインというか、グッと来るリリックが散りばめられています。

 

ティーンや、20代前半ってどうしても、青臭い思想に陥りがちな気がします。

しかし、guca owlの述べる矜持は、あくまでも等身大の自分に向いていて、且つ、人生2周目なのかと思わされるくらい、渋みとディープさがあります。

 

ここまで、本作品について記してきて、気づいたのが、彼は「ありふれたラッパーっぽい表現」を決してしないんですよね。

よく、「俺みたいなやつ他にいねえ」というスタイルのラッパーが多いですが、それをシャウトした瞬間にその他大勢に埋もれてしまう、逆説的現象が起きています。

 

その中で、guca owlは、かなり異例なスタイルのラッパーだと思います。

本アルバムのWORDでも「my own WORD」と繰り返しているように、自分の言葉で自分の世界を表現することにきちんと向き合っている少ないラッパーの一人です。

 

それでは、長くなってしまったので今回はこのあたりで終わりにします。

 

 

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