こんにちは。
アイオー安楽です。
昨日、MCバトルについて、いくつかツイートをしたところ、思ったより反響を頂き、びっくりしてしまいました。
今の高校生は学校でHIPHOP聴いてる人多そうでいいな〜と思ってた。
— アイオー安楽 (@i_oanrk) 2022年1月16日
しかし、黒髪マッシュの陽キャが、教師でニドラアサシンのモノマネしてる動画が回ってきて、これは地獄だと思った。
高校によって、良いHIPHOPの広まり方をしている学校と、バトルキッズが増殖している高校があるみたい。
— アイオー安楽 (@i_oanrk) 2022年1月17日
私の理想の高校はこれです。 pic.twitter.com/IxlN7rkY5d
頂いたリプライや、引用ツイートを見ていると、身の回りでバトルヘッズが増えている事に不満を持っている人が多いみたいです。
私も、バトルヘッズについては、なんとなく苦手意識を持っていました。
そして、最近はMCバトル自体にも苦手意識を持ち始めてきました。
苦手意識というよりは、MCバトルに興味がなくなってきてしまったという方が正しいかもしれません。
しかし、「なぜバトルヘッズが苦手になってしまったのだろう?」と考えると、私の中で明確にすぐに答えが浮かんできませんでした。
かつては、MCバトルが好きで、YouTubeで動画を漁っていた時期もあったからです。
今ではすっかり見なくなってしまった、フリースタイルダンジョンも、放送が開始されてしばらくの間は、毎週欠かさずに見ていました。
という訳で、今回はバトルヘッズやMCバトルが苦手になった理由について、考えてみようと思います。
バトルヘッズやMCバトルに対して、同じような意識を持っている方は、この記事を読んだ後に是非意見を聞かせて欲しいです。
そして、「ぼく(わたし)はバトルヘッズだよ!」という方は、気分を害する可能性があるため、この先を読み進めない方が良いかもしれません...。
MCバトルの客層の変化
まずは、MCバトルが苦手になってきた時期を振り返ってみました。
私が、MCバトルが苦手になってきてしまったのは、2017年ごろです。
フリースタイルダンジョンの影響で、MCバトルが一般的に認知されてきた頃だと思います。
CreepyNutsがメジャーデビューした事もあり、一気にMCバトルシーンに、人とお金が流れ込んできた時期です。
それまでHIPHOPを好きになる入口として、MCバトルが機能していたことはありませんでした。
少し前までは、ヘッズにHIPHOPを聴き始めたきっかけを尋ねると「地元の先輩が聴いていたから」「親が聴いていたから」「8mileを観てから」「テレビやラジオでZeebraの曲が流れてたのを聴いてから」というような、理由が多かったように思えます。
そして、ある程度有名なラッパーの音源を聴いていくうちに、MCバトルというものを知る...といった流れがあったと思います。
一方、あまり知名度のないラッパーがMCバトルで結果を残すことで名前を売り、音源を聴いてもらう...という相互の循環がありました。
今では、音源のイメージが強い、PUNPEEなんかも昔はバトルに出ていました。
そして、その流れは2012年からBSスカパー!の『BAZOOKA!!」という番組で放送されていた、高校生ラップ選手権にも受け継がれていたと思います。
MCバトルが流行り出す前は、日本語ラップの冬の時期と言われていたこともあり、普通に暮らしていたら、HIPHOPに触れることはほとんどありませんでした。
地元の先輩が聴いていたり、親の影響のような、身近な人の影響や、何かの間違いでHIPHOPに偶然接触してしまわない限り、HIPHOPを聴き始めることは少なかったのです。
T-Pablowがラップスタアで「全然食えている人がいないのに、あの時期からラッパーをやろうと思っていた人たちはちょっと頭がおかしい」というような発言をしていた通り、あの時期からラッパーとして活動していた人たちは、HIPHOPに対して偏愛がある人達ばかりでした。
そして、HIPHOPを聴くヘッズたちも、学校や職場では誰も聴いている人がいないにも関わらず、家でシコシコ音源をディグって、数少ない周りのHIPHOP好きに共有していたような人達だと思います。
しかし、フリースタイルダンジョンがお茶の間に流れ、MCバトルが一般的に知れ渡ると、MCバトルからHIPHOPに触れる人たちが増えてきました。
それと同時に、「周りが聴いているから」「流行っているから」という理由で、聴くミーハーの人たちが増えてきました。
マーケティング用語でいうと、「アーリーマジョリティ」と言われる層です。
市場規模を広げるという意味では、HIPHOPというコンテンツを楽しむ人口が増えることは非常に良いことなのですが、残念な事に、この頃から「知名度のないラッパーがMCバトルで知名度を上げて、音源を聴いてもらう」という流れが弱くなってきました。
MCバトルと音源の断絶
2017年頃から、「バトルラッパーはバトルラッパー」「音源ラッパーは音源ラッパー」という棲み分けがなんとなく出来てきてしまいました。
これは、先ほど取り上げた「高校生RAP選手権」の出場者を見てみると分かりやすいです。
2012年に行われた第1回から2016年の第10回までは、現在は音源でシーンの第1線で活躍しているラッパーが非常に多いです。
T-Pablow、YZERR、FujiTaito、WILYWNKA、GOMESS、Hideyoshi、HIYADAM、dodo、Ry-lax、Weny Dacillo、leon fanourakis、SANTAWORLDVIEW、ちゃんみな、Rei@hi、OZworldなど、今全員を集めようと思ったらほとんど不可能なくらい、大成しているラッパーばかりです。
しかし、2017年の第11回高校生RAP選手権から、顔ぶれに変化が生じてきます。
MCバトルで活躍しているラッパーは多いですが、音源で売れているラッパーがほとんどいなくなってきます。
音源でもコアなヘッズに認められているのは、RedEyeくらいでしょうか(一方で、RedEyeを苦手な人も多いです)
そして、第3回〜第10回まではあったライブが、第11回からはなくなってしまいます。
それまでは、ANARCHY、SEEDA、KOHH、KREVAなど、シーンの第1線を走るラッパーのライブも高校生RAP選手権の大きな楽しみの1つでした。
しかし、第11回からはパタリとなくなってしまったのです。
番組の制作予算を削減するためか、MCバトルだけで十分に客を呼べるようになったのか、客層がライブを求めなくなったのか、理由は分かりませんが、こうしてMCバトルから音源にヘッズが流れる動線が1つなくなってしまいました。
こうして、段々と「MCバトルが好きな人たちはMCバトルだけを楽しむ」といった層が増えてきました。
そして、MCバトルで活躍するラッパーは、音源は出さずにバトルラッパーとして、MCバトルのスキルを磨くことに専念するようになっていきました。
一方、YouTubeやSoundCloudなど、MCバトルで名前を上げる以外にも、自分の曲を知ってもらう手段ができたため、音源の製作を重視するラッパーは音源に集中するようになっていきました。
こうして、バトルMCとそれ以外のラッパーとの断絶が広がっていったと考えています。
そして、両者のヘッズも音源とMCバトルを両方楽しむことが徐々に少なくなり、どちらかに一方に寄っていってしまったのではないでしょうか。
また、MCバトルブームからMCバトル=HIPHOPだと認識して入った層は、そもそも音源に興味を持つ必要がないまま、MCバトルにどっぷり浸かっていったのではないかと思います。
バトルヘッズを嫌うその他のヘッズ
こうして、なんとなくバトルヘッズとそれ以外のヘッズが分かれていったのですが、微妙に重なり合っている部分があるのがややこしいところです。
バトルヘッズに中高生が多かったことや、あまりHIPHOPについて詳しくない人が多かった事から、MCバトルを好きな若年層が「バトルキッズ」と揶揄され始めました。
この頃から、「HIPHOPが好き!」という知り合いに「誰が好きなの?」と聴くと、「呂布カルマ!(なぜかちょっと通ぶっている)」みたいな、やりとりが日本各地で繰り広げられ、ヘッズからのヘイトが蓄積される事になります。
それからしばらく経つと、MCバトル界隈で有名だった空音やRin音が、音源でもTikTokで大バズりし、中高生のラップ好き人口の増加が加速していきます。
そして、空音やRin音を好きな中高生がSNSのプロフィールに「HIPHOPが好きです!空音/Rin音」などを記載するようになり、それを目にしたヘッズは「あんなのHIPHOPじゃないやろ!」苛つきながら、バトルMCへの恨みを深くしていきます。
さらに、TiKTokでは、中高生にBLOOM VASEというラップの曲が流行ったり、とりあえずChillな雰囲気のラッパーが売れたりする現象が起こり、若年層に特有のHIPHOPの流行りができてきました。
そして、人によって思い浮かべる、HIPHOPのイメージがかなり異なっていきます。
こうして、ジャンル間のヘッズの断絶が進んでいき、王道的なHIPHOPのヘッズはバトルヘッズや、TikTok系でバズったラッパーしか聴かない人たちを嫌悪するようになっていきます。
そして、このような断絶が起こってしまった原因の1つは、フリースタイルダンジョンを始めとする、MCバトルブームによって、一気にHIPHOPというカルチャーに流れ込む人口が増えてしまったからです。
そのような雰囲気もあり、バトルヘッズやMCバトル自体にも苦手な意識を持つ事になってしまったのではないかと思います。
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