こんにちは。
アイオー安楽です。
昨日、Tohjiの新作「broken ep」の配信がスタートしました。
このEPは、昨年12月にTohjiが愛車のFDを運転中に見舞われた事故での体験が元となって、作られた作品です。
本作は、"rip ma FD skit"というskitから始まります。
タイトルから分かるように、事故で廃車となってしまったFDについての短い語りが流れます。
skitの次は、"カモメ"が流れます。
FDはマツダのスポーツカーです。
マツダのエンブレムは、MAZDAの「M」から来ており、同時に鳥の翼をモチーフにしています。
そのため、「カモメマーク」と呼ばれる事もあります。
FDに乗って色んな場所に行った事を、空を飛び回るカモメになぞらえて歌うTohjiの表現力は流石です。
ちなみに、「テスコの上 ヨーカドーの上」の「テスコ」は、イギリスにあるスーパーの名前です。
Tohjiが3歳までイギリスで生まれ育った事にも関係しているのでしょうか。
3曲目の"on n on(early in the morning)"は、不思議な感覚になる曲です。
「Music is is on n on n on...」というリリックから始まり、終わります。
その間には、「水を飲んでたり」「シャワーと光」「化粧水を塗ったり」「沈み込む水 カラダの中」と、水をイメージさせる単語が並べられます。
Tohjiの音楽が水のように、スーッと染み渡るような気持ちになります。
その後は、"a piano boy skit"というピアノによる短いskitが流れ、自然に"M78(ma FD)"という最後の曲に移り変わります。
私はこの"M78(ma FD)"がこのEPの中で一番好きです。
M78はウルトラマンの故郷である「M78星雲」を指しています。
曲中にも、「スペシウム光線」「ウルトラのママ」「ウルトラのパパ」というリリックがあるように、ウルトラマンを想起させる単語が散りばめられています。
また、「このままどっかへ行かせて 億光年先の未来へ」など、どこかマクロな視点で語られているような印象を受けます。
一方で、「羽田沿いで燃えていった 小さくあげた煙」「煙あげた港北の光」など、一気にミクロな視点に引き寄せられます。
このような視点の自由自在さや、「絡み合う銀色のボディ ハードにヒット 極真カラテ」のような、事故の瞬間をTohjiならではの言葉で表現している点が、この曲を非常に魅力的でアーティスティックなものにしていると感じました。
そして、この曲、このアルバムを聴くと、なんだかとても懐かしい気持ちになるのです。
最初は、「なんだか落ち着くし、懐かしい気持ちになるEPだなあ」とぼんやり思っていたのですが、少しずつその理由が分かってきました。
喪失の経験
1つ目は、ほとんど誰にでもある「失くした経験」がテーマのEPだからだと思います。
誰しも、大切な人や、ペット、大切にしていたモノを失くした経験はあると思います。
このEPでは、一貫してTohjiが愛車のFDを失くしてしまった経験・感情が綴られています。
あるものを失くしてしまった時に想起される、楽しい思い出や、心に穴がポッカリと空いたような喪失感や、悲しさのような、普遍的な感情が、このEPを聴くと私は思い出させられます。
勿論、TohjiのSNSで、Tohjiが愛車のFDを大事にしている様子や、様々な場所に出掛けている様子を見ていたから、彼のFD自体に愛着を感じていた部分もあります。
しかし、それよりもっと根源的な、潜在的な部分で、心を動かされる力がこのEPにはあります。
dodoが愛犬を失うことについて歌った、「xxxmass」や、「Fo」「nirvana」を聴いた時も、同じような感情を覚えたのですが、dodoの曲に関しては、あくまでも人やペットなどの「生き物」が対象であって、車のようなモノまでには、普遍化されていませんでした。
そもそも、dodoの曲は、彼の愛犬について歌った曲なので、人やペットに対しての喪失感が強く想起させられるのは、当たり前です。
どちらが良くて、どちらが悪いという訳では決してないのですが、愛車という「モノ」にまでも、ここまで懐かしさや喪失感を想起させるような表現をできるTohjiの表現力の高さに、改めて驚かされました。
正直、HIPHOPで語れることの限界を、最近感じ始めていたのですが、まだまだ可能性は無限大に広がっている事を気付かされたEPでした。
是非、まだ聴いていない方は聴いてみてください。
既に今回のEPを聴いた方は、よかったらどう感じたか、感想を聞かせてください。
EPを聴いた後に、今回のEPに関する↓の動画を見ることもおすすめします。
という訳で、今回はTohjiの「broken ep」についての記事でした。
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