こんにちは。安楽です。
アメリカのシリコンバレー銀行が破綻して、様々な金融機関に影響が波及しています。
そんな中、Cirle社がUSDCの準備金400億ドルのうち、33億ドルをシリコンバレー銀行に預けていたことが発覚し、USDCから資金を逃す人が増え、USDCは1ドルを維持できなくなっています。
現在、市場ではUSDCがペグを戻すと考えている人と、USDCのペグが外れて暴落すると考えている人がいます。
ペグが戻ると考えている人は、USDCの準備金の利回りで今回の損失を埋め合わせることができると考えているようです。
しかし、準備金の利回りで損失を埋め合わせることができないシナリオは存在しないのでしょうか?
今回はそんなシナリオについて、考えてみようと思います。
USDCのペグが戻らない条件
USDCの価格が1ドルに戻らない条件としては、下記の2つが考えられます。
①準備金が足りなくなり、USDC→ドルの償還に対応できなくなる
②Cirle社が会社として運営できなくなり、USDC→ドルの償還に対応できなくなる
「準備金さえあれば、USDCをドルと交換して貰える!」と考えている方もいますが、そもそも運営主体であるCircle社がまともに機能しなくなれば、USDCとドルの交換が出来なくなってしまいます。
Circle社は営利団体なので、利益を上げられなくなればやがて破綻するしかありません。
Circle社のビジネスモデルと、損益分岐点を考えることでCircle社が破綻する条件を考えてみます。
Circle社のビジネスモデル
Circle社のビジネスモデルは、非常にシンプルです。
Circle社のビジネスモデル
①USDCの発行と引き換えにドルを預かる
②預かったドルの一部を米国短期国債で運用する
③米国短期国債の金利を得る
④③の金利からCircle社の運営にかかる経費を捻出しつつ、利益を上げる
Circle社の利益は次のように計算することができます。
そして、利益がマイナスになるとビジネスモデルが破綻してしまい、会社として機能しなくなる可能性があります。
米国短期国債の収入-販管費等=利益
米国短期国債の収入
現在、Circle社は準備金の約8割を米国短期国債で運用しています。
この米国短期国債の利回りがCircle社の収益となります。
販管費用
続いて、販管費用にどのくらいコストがかかっているのかを考えてみましょう。
現在、Circle社は900人〜1,000人ほどを雇用しています。
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Circle社の人件費は高く、平均年収は16万ドルです。
人件費だけで、年間1億6,000万ドル(従業員を1,000人として計算)もかかっているのです。
オフィスの賃料や福利厚生等を加味にして、1.5倍の2億4,000万ドル程度が販管費としてかかっていると仮定しておきます。
その他にも、サーバー費用等がかかってきますが、そこまで大きな金額ではないと思われるので、一旦無視します。
足りない準備金の金利
それ以外にかかる費用として、シリコンバレー銀行が破綻した際に失われた準備金の金利があります。
Circle社はとりあえず33億ドルの準備金をどこからか調達しなければいけません。
2022年末時点で、Circle社は4億ドルのキャッシュを保有しているので、仮にそこから3億ドルを補填するとしても、残りの30億ドルを調達して金利を払わなければいけません。
30億ドルを借りて年利5%の金利を払うと、年間1億5,000万ドルの支払いが発生します。
Circle社は先ほどの販管費用と合わせて、年間3億9,000万ドル以上の収益を上げなければいけないのです。
USDCの命運は時価総額にかかっている
先ほど確認したように、Circle社は準備金の一部を米国短期国債で運用することで収益を得ています。
そのため、USDCの時価総額が減ってしまうと、米国短期国債の運用利益が減ってしまい、上記の販管費用や金利を支払うことができなくなってしまう可能性があります。
常に準備金の8割を米国短期国債で運用すると仮定すると、準備金が100億ドルを切ると、金利収入<販管費+金利支出となってしまい、赤字を垂れ流す会社になってしまいます。
どこかの金融機関や会社が救済してくれれば良いですが、誰もCircle社に救いの手を差し伸べなかった場合は、破綻するしかありません。
時価総額の減少推移
最後に、現在の時価総額の減少推移を確認してみます。
USDCの時価総額は半日で約14%下がりました。
今の状況でUSDCを持っておきたいと考える人は少ないと思うので、このペースで1日20%ずつ時価総額が下がっていくと仮定すると、たった1週間でCircle社は利益を上げることができなくなってしまいます。
「そんな勢いでUSDCの時価総額が下がる訳がない!」と考える方のために、去年のUSTはこのくらいの勢いで時価総額が失われました。
USDCが何事もなく復活するか、市場から消え去るかは分かりませんが、リスク管理として持っているUSDCを別の資産に変えておく事が、現状での合理的な行動だと思われます。