こんにちは。安楽です。
Liquityを使って発行することができるLUSDが今注目されている理由について、書いていきます。
・LUSD自体は2021年から発行されているのに、どうして今のタイミングで注目されているのか?
・数ある分散ステーブルコインの中でもLUSDが注目されている理由は?
について考えていきたいと思います。
前回の記事を読んでからの方が理解がしやすいと思うので、未読の方は一読ください↓
LUSDとは
簡単にLUSDの概要についておさらいしておきましょう。
と言っても、非常にシンプルな仕組みで動くステーブルコインのため、次の2点だけ押さえておけば、大枠を理解する上では問題ありません。
・ETHを担保としてLiquityで発行できるドルに連動したステーブルコイン
・プロトコルの管理主体はなく、設定の変更をできる人は誰もいないため、イーサリアムが動く限りは誰も止めることができない
管理主体が存在するステーブルコインのリスク
続いて、昨今のステーブルコインを取り巻く環境について確認していきましょう。
BUSDの新規発行停止
今年の2月に、BUSDを発行するパクソス社がBUSDの新規発行停止を命じられました。
法定通貨担保型のBUSDはペグは外れてはいないものの、時価総額は減少の一途を辿っており、上位10銘柄から消えてしまうのも時間の問題となっています。
中央集権ステーブルコインのリスク
このように、管理主体がいるステーブルコインは、管理主体が規制等によって攻撃されてしまうと、新規発行ができなくなったり、ペグを保てなくなるリスクがあります。
また、担保となる裏付け資産をそもそも所有していない可能性すらあるのです。
現に、USDTを発行するテザー社は、「裏付け資産を所有していないのではないか?」と度々議論の的になっています。
このように、現在、時価総額の大きいUSDTやUSDCは、管理主体のテザー社やサークル社への信用に依存してしまっているため、潜在的なリスクを抱えていると考えられます。
分散ステーブルコインへの注目
上記のようなステーブルコインを取り巻く環境下で、管理主体の存在しない分散ステーブルコインが再び注目されています。
管理主体がいないステーブルコインであれば、政府や機関が止めようとしても止めることができないからです。
しかし、分散ステーブルコインであれば、どのようなものでも良い訳ではありません。
実は誰かが止められるような仕組みになっていたり、簡単にペグが外れてしまっていたりしては意味がないからです。
そのため、次の2つの点が分散ステーブルコインの利用において、重要視しなくてはいけません。
・検閲耐性
ここでは、第三者による影響受けづらいという意味で、「検閲耐性」という言葉を用いたいと思います。
検閲耐性が高ければ高いほど、誰にも止めることができないという意味です。
発行主体のあるステーブルコインは発行主体が何らかの規制を受けたり、杜撰な管理をしていると価値が暴落してしまうリスクがあります。
そのため、ブロックチェーン上でアルゴリズムに沿って動いていればいいという訳ではなく、十分に分散された検閲耐性の高いチェーン上で動いており、そもそもプロトコルは誰も変更できないようになっている必要があります。
LUSDを発行するLiquityはイーサリアム上で動いています。
また、Liquityプロトコルに変更を加えることをできる人や組織は存在しないため、イーサリアムが動き続ける限り、LUSDの発行を止めることは誰にもできません。
そのため、イーサリアムの検閲耐性=LUSDの検閲耐性となります。
そして、現在、SECが十分に分散化されていると認めている仮想通貨はビットコインとイーサリアムのみです。
そのため、ビットコインとイーサリアム以外のブロックチェーン上で動くプロトコルはLiquityよりも検閲耐性が低いと考えて差し支えないと思います。
・ペグが外れない
ステーブルコインにとって、価格がきちんとドルに連動することはとても重要です。
アルゴリズムで動く分散ステーブルコインの中には、去年のTerraショックのように、何かのきっかけでペグが外れてしまうリスクを抱えている仮想通貨もあります。
Terraが発行していたステーブルコインUST(現USTC)のチャート
一方、LUSDはETHによって過剰担保されており、原則的にペグが外れることはありません。
1ドル以下でLUSDが流通している場合、それを買い上げてLiquity上で1ドルと同額のETHと交換することができるからです。
そして、Liquity上にプールされているETHが足りなくなって、LUSDとETHを交換できなくなることは原則的にありません。
実際に、LUSDはほとんどの期間で1ドル以上の価格を維持しています。
Liquityの詳しい仕組みについては、こちらの記事をご参考ください↓
このように、LUSDは高い検閲耐性と優れたペグを保つ仕組みによって、誰も規制することができない安定したステーブルコインを実現しています。
他の分散ステーブルコインはどうか?
しかし、分散ステーブルコインはLUSD以外にもあります。
それらのステーブルコインと比較して、LUSDの方が優れている点がなければ、LUSDが今以上流通することはなく、いずれ誰も使わなくなってしまうでしょう。
現在、LUSDよりも時価総額が大きな分散ステーブルコインは、6つあります。
・DAI
・USDD
・FEI
・USTC
・FRAX
・USDJ
それぞれ特徴を見ていきましょう。
・DAI
DAIはMakerDAOによって発行される、仮想通貨による過剰担保型のステーブルコインです。
DAIは時価総額も大きく、分散ステーブルコインの中で最も流通しています。
しかし、MakerDAOはガバナンストークン「DAO」を発行しており、ホルダーの多数決次第でプロトコルに変更を加えることができてしまうリスクがあります。
ETHよりも遥かに分散性に劣る、ガバナンストークンのホルダーの多数決によって、プロトコルの仕様を変えることができてしまうのです。
現状、DAIの価格が毀損されるような可決がされることは考えられにくいですが、リスクは小さければ小さいほど良いです。
一方、LUSDを発行するLiquityにはガバナンストークンが存在せず、今の仕様からプロトコルを変更することもできません。
プロトコルの仕様が絶対に変更されず、高い検閲耐性を備えているという意味で、LUSDはDAIよりも優れていると考えられます。
・USDD
USDDは、TRXやUSDCによる過剰担保型のステーブルコインです。
USDDはほとんどの期間で1ドルを下回っており、そもそもペグができていないため、ステーブルコインとしての役割を果たしていません。
・FEI
FEIは、FEIが1ドルより低い時に売ろうとするとペナルティが発生し、FEIを買おうとするとインセンティブが発生するという仕組みを元に価格を保つステーブルコインです。
しかし、仮に1ドルよりも低い時に売ろうとする人しかいなかった場合、FEIは永遠に1ドルを下回り続けます。
実際にFEIのローンチ時には、FEIが急落する騒動がありました。
現在は安定して1ドルをペグしていますが、再度このような状況に陥らないとは言い切れません。
また、上記の騒動の際にプロジェクト側がペナルティの操作をしたように、そもそもプロジェクト側がプロトコル自体の変更ができてしまうため、検閲耐性の強さについては疑問が残ります。
・USTC
USTCはTerraショックで暴落したUSTが名前を変えたもので、そもそもペグが外れたまま戻っていません。
今だにそれなりの時価総額があるのは、「もしペグが戻ったら大金持ちになる!」と信じてやまない人たちが今だにUSTCを買っているからです。
・FRAX
FRAXは大部分をUSDCによって担保されたステーブルコインなので、実態は中央集権的な仕組みに依存したステーブルコインです。
検閲耐性は高くありません。
・USDJ
USDJはトロンネットワーク上で動く、JUSTによって発行されるステーブルコインです。
TRXを担保として預け入れることで、発行することができます。
仕組み自体は、LUSDとよく似ていますが、より分散されたイーサリアム上で動くLiquityの方が検閲耐性に関して軍配が上がるでしょう。
まとめ
このように、現状LUSDよりも普及しているステーブルコインに比べて、LUSDが優れている点は多いです。
特に、検閲耐性については、どの分散ステーブルコインよりも高いです。
そして、誰にも資産を没収されることがない「検閲耐性」こそがブロックチェーン上でステーブルコインを持つ上で一番大きなメリットです。
ブロックチェーンの利便性について、イーサリアムの創案者のヴィタリック・ブリテンはこのように述べています。
「キラーアプリ」にいちばん近いものを我々が仮にもてるとすれば、それはすでに登場している機能であり、もうイヤになるくらい派手に語りつくされているはずだと断定してもいいくらいだ。たとえば、ウィキリークスとシルクロードの検閲耐性がそれに当たる。
中央集権組織への信頼をベースにしたステーブルコインと、分散化による検閲耐性の強いステーブルコインのどちらが将来的に普及していくかは非常に楽しみですね。
今後もステーブルコインの動向はウォッチしていこうと思います。
前回の記事はこちら↓
ヴィタリックによるイーサリアムについての著作↓