こんにちは。
アイオー・安楽です。
皆さんは、KOHHと聞いて、思い浮かべるものはなんでしょうか?
私は、アーティストなら「マルセル・デュシャン」、ファッションブランドなら「メゾン・マルタン・マルジェラ」(現在はメゾン・マルジェラに変更)です。
既存概念をひっくり返したマルシェル・デュシャン
マルセル・デュシャンは、フランス生まれのアーティストで、20世紀で最も重要なアーティストの一人と言っても過言ではありません。
そのくらいアートへの既成概念をひっくり返してしまった人物です。
例えば、こちらの「L.H.O.O.G」という作品。
KOHHの首元に入っているタトゥーと同様のものです。
最近は、首元にタトゥーを入れているラッパーが増えてきましたが、個人的には、KOHHのデュシャンのモナリザのタトゥーが一番かっこいいと思っています。
また、近年では首元にタトゥーを入れる風潮も広まってきましたが、KOHHが活躍し始めた10年ほど前は、まだ彼くらいしかここまで大胆にタトゥーを入れいてる日本のラッパーはいなかった印象です。
この、デュシャンの「L.H.O.O.G」は、モナリザの口元に髭を付け加えただけの作品です。
高尚な作品として、全世界で名を知られていたモナリザの口元に髭を描くことで、「みんな真面目に考えすぎじゃない?」ということを訴えているかのような作品です。
このように、デュシャンは既存の概念を壊し、新しいモノの見方を問いかけるという点で、非常に面白い試みをしています。
そして、それが反映された作品が高く評価されているのです。
マルジェラの脱構築
そして、マルジェラも、それまでの既存概念をひっくり返してしまったという点では、マルセル・デュシャンに通じる点があります。
マルジェラは、マルタン・マルジェラという人物によって、設立されたパリのブランドです。
マルジェラと言えば、ブランドタグの代わりのステッチが有名です。
これも、それまで一般的だった、ブランドタグを取り去って、服そのものの価値を感じてもらうという点で、それまでの常識をひっくり返しました。
しかし、現在は、あまりにもマルジェラのステッチが有名になってしまったため、当初の思惑からは異なった方向に、人々の感情が動いているようにも思われます。
また、タビブーツもマルジェラの代表的なアイテムです。
タビブーツは、名前の通り、日本の足袋から着想を得て作られています。
このように、マルジェラのアイテムは、既存の伝統的なアイテムに一捻り加えたようなアイテムが多いです。
よくマルジェラがどのようなブランドかを表す際に、「脱構築」という表現が使われます。
マルジェラは、1980年代に当時高級志向だったファッション業界へのアンチテーゼとして、軍服のリメイクや、ボロボロのダメージデニムなどを提案し、「モード」の概念を覆しました。
世の中の様々な事やモノの、与えられた役割や用法から解放するという意味で、「脱構築」という言葉は使われています。
一見、トリッキーな手法にも思える、「脱構築」ですが、「目新しい事をなんでもやればいい」という事ではありません。
作る過程に再生があるのであって、破壊が目的になってしまってはいけないのです。
「破壊と再生」という言葉がありますが、単に何かを打ちこわして再生するのではなく、破壊に至るプロセスと、再生に至るプロセスのどちらも揃っていないと、誰にも必要とされない頓珍漢な作品ができてしまうだけです。
タビブーツや、その他のマルジェラのアイテムも、元の伝統的なブーツやジャケットへのリスペクトがあって、それを研究し尽くした上に、マルジェラの脱構築的なデザインが生まれてくるのです。
KOHHの思想
これは、KOHHの音楽性にも通じるところがあります。
KOHHは、日本のHIPHOPシーンを変えた人物と言っても過言ではありません。
現在の流行りのTRAPスタイルは、KOHHが日本で広めたと言っても、間違いではないと思います。
KOHHの前にも、TRAPスタイルの曲を出している日本のラッパーは沢山いました。
しかし、国内でメジャーな人気を博し、海外でも認められているのは、KOHHくらいです。
誰が国内にTRAPを持ち込んだのかは、分かりませんが、TRAPスタイルをあるレベルまで完成させたのはKOHHです。
今は、誰が聴いても分かるような平易な言葉でラップするラッパーは多いですがKOHHが作品を発表し始めた2010年前後は、かなり異端なスタイルでした。
それまでは、どれだけ技巧的なラップをするかに、焦点を置いたスタイルのラッパーが多かったように思えます。
KOHHのスタイルは、当時誰の目にも新しく映りました。
そして、今でこそ多くの人に認められているKOHHでしたが、当時は、KOHHを批判する人も多かったのです。
KOHHがHaterについてラップをしたHatersという曲まであります。
KOHHはリリックに他のラッパーのネームを入れる事が多々あります。
Kダブシャインや、ANARCHY、MC漢など、昔から活動している古参プレイヤーへのリスペクトの意識がしっかりあります。
この意識は、マルジェラの「脱構築」も通じる部分があります。
KOHHは、Margielaという曲を出しています。
MR.BROTHERSの店内の内装もカッコいいですし、KOHHのマルジェラの八の字ライダースもバチバチに似合っています。
モード後の世界
正直なところ、まだまだマルジェラとKOHHの関連性については、感覚的には分かっていても、言葉にできていない部分がたくさんあります。
そもそも、私自身はファッションについても疎いですし、モードについても「モード後の世界」という本を読むまでは、ほとんど何も知識がありませんでした。
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「モード後の世界」は、ユナイテッドアローズの創業メンバーである、栗野宏文氏の著作です。
栗野氏は、現在もユナイテッドアローズの上級顧問や、LVMHプライズの審査員もつとめるなど、ファッション業界の第一線で活躍する人物です。
それと同時に、ファッションへの造詣が非常に深い人物でもあります。
そんな、栗野氏がファッション業界をモード以前、モードの興隆、モード後と、切り分けて、語っているのが本作です。
中でも、モード系ファッションの大御所である、マルジェラ、コム・デ・ギャルソン、ヨウジ・ヤマモトについての記述が私には、非常に学びになりました。
よくデパートなんかでも見るものの、実際のところ、これらのブランドのどういった部分が高い評価を受けているのかが、理解できていなかったからです。
そして、「モード後の世界」を読むと、これらのブランドは、当時革新的なアイテムを世の中に送り出し、後にそれがスタンダードになったため、高い評価を受けたという事が分かります。
そして、上記のブランドは、現在もなお、世の中に新しい価値観を提供するようなアイテムを提供し、そういった面では常に業界の最先端にいるといっていいでしょう。
これは、KOHHにも共通する部分があります。
KOHHのようなスタイルのラッパーは、今では沢山います。
平易な言葉をトラップビートに乗せるようなスタイルです。
そして、単純にトラップビートへの乗せ方だけを比較すると、KOHHよりもスキルがあるラッパーも沢山います。
しかし、KOHHの近年の曲を聴くと、ザ・トラップ!というような曲は少なくなってきました。
反対に、Taiyonのようなメロウな曲が増えてきていると感じます。
他のラッパーと違うスタイルを模索し続けているという意味で、彼は未だにシーンの最先端を走っていると感じます。
日本のHIPHOPシーンのマルジェラです。
ということで、今回はKOHHとマルジェラの関連性について、考えてみました。
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